vs.桐生改造ダンプ軍団
TVを観ていて 群馬県出身のタレントが出演していると
自分が初々しい新入社員だった頃を思い出します。
設計部に所属していましたが、
研修という形で時々現場に出ていました。
水はけを改良する為に火山砂利というシンダー材料を
2日間に渡って大量に搬入する事になりました。
先輩社員の注意事項があり、
材料産地が群馬県桐生市でダンプカーの運転手達の気が少し荒いという事。
材料が一般砕石と比較して軽量なので改造ダンプカーに特盛りで運搬してくる事。
改造も特盛りも違反なので夜明け前に車両を返す事。
大量に使用する材料なので計量は正確にする事。
と事務的に説明されました。
場所は大井埠頭。時期は12月です。
当日午前3時半頃現地に行ってみると
真っ暗な公園沿いの道路に
今まで見た事ないぐらいアオリ板を高く改造したダンプカーが
10台くらい既にディーゼル音を響かせて待機しています。
自分が近づいていくと
全員がダンプカーから降りて来ます。
乗っていた車両がダンプカーじゃなかったら
全員暴走族か暴力団のような雰囲気を醸し出しています。
問題は計量です。
現在では出荷時に積載量が記入されている為
現場での計量作業はありませんが、当時は重要な管理項目です。
アオリから下は長方体の体積、アオリから上の山の部分は
台形の面積×長さで算出しますと説明します。
冷えきったタラップから荷台に登って寸法を取り、
電卓を使って体積を出します。
1台目の計量の時は全員に囲まれて、必要以上に
顔を寄せられながらの作業です。
アップになって判りましたが、
その中の1人は眉毛を剃っていて蛇と般若の刺青で
眉毛の形にしていました。
『おぉ、確かに桐生は凄いな』と心の中で思いながら
先輩からのもう1つの指令を実行します。
電卓で計算する際
最後に『×0.9』を押して数量を減らす事です。
堂々とやれば大丈夫だからといわれていましたが、
こんなに囲まれて顔を近づけられての作業になる事は
聞いていません。
緊張しました。
1台目の数量はだいたい16.2㎥ぐらいだったと思います。
普通の大型ダンプカーでは過積載でも13㎥くらいなので
凄い量です。
「16.2㎥です」と発表すると全員から大ブーイング。
再度算出方法を説明して渋々納得してもらいました。
2日目は眉毛刺青男から監督のやり方で計算してみたけど
やっぱり昨日の量は少な過ぎだと文句言われたので
『×0.9』は止めました。
更に後日、事前説明が少しずつ足りない先輩社員から
「本当に『×0.9』やったんだ!お前凄いな!!」と言われ、
純真無垢な自分は会社の厳しさ、汚なさを
少し学びました。
台形の面積の出し方を2日目に覚えて来た眉毛刺青男の方が
自分としては好きです。